【FFT 短編小説】ボーアダム・ダーラボンの教官日誌

二次創作 小説
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王立アカデミーの静かな昼下がり、ボーアダム・ダーラボンはいつものように学び舎の一角で、新たな生徒たちを迎える準備をしていた。彼は長年、王立アカデミーで教鞭を取ってきた経験豊富な教官だが、今日の授業は少し特別なものになる予定だった。

「今日から君たちも、イヴァリースの戦場で戦うための基礎を学んでいくことになる」とダーラボンは一度、大きな教室の扉を開けた。その一言で、静かな空気が一転し、数十人の新入生たちがざわめき出した。

「な、何から始めるんですか?」
生徒の一人が手を挙げ、緊張した面持ちで問いかける。

ダーラボンは穏やかな笑顔を浮かべると、授業用の大きなマップを机に広げ、ゆっくりと話し始めた。
「まずは、基礎からだ。戦闘の基本操作、ジョブシステム、そして君たちが使えるアビリティについてだが、最初に知っておくべきは――」

その時、突然、教室の扉が開き、ひょろりとした男性が急ぎ足で入ってきた。
「ダーラボン先生! すみません、少し遅れました!」
その男は、王立アカデミーの新任生徒であるジェイソンだった。彼はまるで今しがた戦場から帰還したかのような顔をしており、息を切らしながら教室に飛び込んできた。

ダーラボンは微笑んだ。「心配しなくていい、ジェイソン。戦場に遅刻してはいけないというわけではないからな。」

しかし、生徒たちはその言葉に不安を覚えたようで、誰もが思わず身を固くしてしまった。戦場とは一体何なのだろう? こんな教室で学ぶだけで済むのだろうか?

ダーラボンは続けた。「さて、君たちがこれから学ぶべきことは、戦闘の基本だ。君たちはまず、武器の使い方を覚えなければならないし、次にジョブを選んで、それに必要なアビリティを学ぶ。だが、忘れてはならないのは、この戦場が君たちにとって唯一の戦場ではないということだ。」

生徒たちは、ダーラボンの言葉に真剣に耳を傾けた。だが、ジェイソンはまだどこか理解できていない様子だった。

「先生、それはつまり、私たちも実際に戦わなければならないのですか?」

ダーラボンはニヤリと笑った。「もちろんだ。戦うためにここにいるんだろう? だが、安心しろ。まずは、このシミュレーションマップで戦うんだ。戦場とは言え、こちらはあくまで理論の場。君たちの最初の任務は、ただ一つ、基本的な戦闘操作を身につけることだ。」

「なるほど、理解しました。」
ジェイソンは大きく頷いたが、まだ不安そうな顔をしている。ダーラボンはその表情を見逃さず、さらに続けた。

「今から君たちを小規模な模擬戦闘に参加させる。その前に、各自が使いたいジョブを選んでくれ。それぞれに合ったスキルを身につけていこう。」

生徒たちは次々とジョブを選んでいく。戦士、魔道士、白魔道士…多種多様な選択肢が並ぶ中、ジェイソンは迷った末に「弓兵」を選んだ。

「素晴らしい選択だ、ジェイソン。弓兵は長距離から敵を攻撃できる優れた職業だ。ただし、弓の矢は決して無駄に放ってはならない。精度が命だ。」
ダーラボンはジェイソンに軽くアドバイスをし、全員をシミュレーションフィールドに導いた。


数分後――

シミュレーション戦闘が始まった。最初は簡単な敵を配置しただけの模擬戦だったが、生徒たちの反応は様々だった。

戦士のレオナルドは素早く前進し、剣を振るって敵を倒していく。一方、魔道士のリリィは、魔法を駆使して遠距離攻撃を行い、さすがの腕前を見せつけた。だが、ジェイソンは弓を引くタイミングを見計らっているうちに、何度も敵に接近されてしまった。

「ジェイソン、気を付けろ! 近距離で戦っては不利だ!」
ダーラボンが警告を飛ばしたが、ジェイソンは冷や汗をかきながらも、ようやく弓を引く。

その瞬間、矢が放たれ、見事に敵の目標を射抜いた。しかし、ジェイソンが気づいたのは、矢が飛び過ぎて味方の戦士、レオナルドに命中してしまったことだった。

「うっ…!」
レオナルドが転倒する。その一瞬、教室は静まり返った。

ダーラボンは深いため息をつき、「ジェイソン、お前の矢がどこに飛ぶかは、計算してから放つべきだ」と冷静に指摘する。
「でも、先生、あれは…」
ジェイソンは頭を抱えた。

ダーラボンはニヤリと笑って言った。「君の弓兵としての力量を測るには、実戦ではなく、まずこのような小さな『誤射』から学ぶことが大切だ。それに、レオナルドも少しは成長しただろう。次回は矢を当てないように気をつけろよ。」

その言葉に、クラス全員がホッと息をつき、そして少し笑った。

「とにかく、今日の模擬戦はこれで終わりだ。君たち、良くやった。これからも成長し続けてくれ。」


最後の瞬間
授業を終えたダーラボンは、生徒たちを教室から見送ると、ふと立ち止まった。教室の隅にひっそりと置かれた書類が目に留まる。

「さて、次は何を教えようか…」
彼は少し考え込む。そして、つぶやいた。
「そうだ、次は弓の使い方にもっと注意を払うよう、他の教師にも知らせなければ。」

ダーラボンは軽く肩をすくめて、また一歩前進する。次回の授業で、生徒たちに新たな冒険が待っていることを確信しながら。

そしてその瞬間、再び教室の扉が開き、またもやジェイソンが駆け込んできた。

「ダーラボン先生! 今度は魔法を間違えて味方の近くで使っちゃいました!」
彼の顔にはまたもや焦りと後悔が浮かんでいた。

ダーラボンは深く息をつき、そして言った。
「ジェイソン、お前は本当に、『教官冥利』を尽くさせてくれるな。」

その言葉に、生徒たちから笑い声がこぼれ、ダーラボンもまた微笑みながら教室を後にした。


終わり ※ここで書かれた内容は著者の空想の二次創作です。

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