【FFT】エルムドア侯爵 深掘り解説:銀髪鬼の栄光と悲劇、ルカヴィ転生の謎

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メスドラーマ・エルムドア:英雄からルカヴィへの転生の物語

メスドラーマ・エルムドア(Messam Elmdore, Mesdoram Elmdor)という名前は、『ファイナルファンタジータクティクス(FFT)』のプレイヤーにとって、鮮烈な印象を残すキャラクターの一人です。

メスドラーマ・エルムドア侯爵──彼の名は「銀の貴公子」として、五十年戦争の英雄譚に刻まれています。一方で、その後の獅子戦争では不名誉な最期を迎え、さらに死後には邪悪な存在「ルカヴィ(死の天使ザルエラ)」として再び歴史にその名を刻むこととなりました。

この記事では、彼の生涯、死後の復活、そしてゲーム内での役割について詳しく解説していきます。

 

【銀髪の名将】メスドラーマ・エルムドアの概要

エルムドアはイヴァリース東部のランベリー地方を治める侯爵で、その爵位からも彼がいかに高位の貴族であったかがわかります。

五十年戦争の後半、畏国に侵入する鴎国軍を相手に勇猛果敢に戦った軍人であり、長く美しい銀髪と白銀色の甲冑を纏ったその姿から、戦場では「銀の貴公子」として味方に慕われる一方、敵からは「銀髪鬼」と恐れられました。彼の象徴ともいえる長い銀髪と銀色の甲冑は、戦場での存在感を一層際立たせていました。

エルムドアは、雷神シド(オルランドゥ)や北天騎士団長ザルバッグと並び、五十年戦争の英雄としてイヴァリースの歴史にその名を残しました。しかし、その輝かしい経歴の裏には、悲劇的なエピソードが隠されています。

不遇の侯爵:誘拐と戦死

五十年戦争を経て英雄となったエルムドアですが、その栄光も長くは続きませんでした。獅子戦争の際、エルムドアはゴルターナ公陣営の将軍として参戦します。

しかし、本編において彼の初登場は、骸旅団の副団長ギュスタヴによる誘拐事件という、いささか情けないものでした。救出された際の彼は衰弱し、英雄というには程遠い姿を晒します。

エルムドア誘拐の経緯と背景

エルムドアの誘拐事件は、イヴァリースにおける権力争いと深く関連しています。この事件は、見かけ上はギュスタヴによって行われた単独の行動のように思えるかもしれませんが、その背後には複雑な政治的な陰謀が渦巻いています。

ギュスタヴの誘拐

最初に登場したエルムドアは、誘拐された状態での登場でした。砂ネズミの穴ぐらと呼ばれるゼクラス砂漠の民の集落跡に幽閉されていたところ、独断で行動していたラムザたちにより救出されたのです。

この誘拐がどのように行われたのかについては、いくつかの考えが浮かびます。

まずギュスタヴがどのようにしてエルムドアを捕らえたのかが謎です。エルムドアが油断している隙を突かれたのか、あるいはダイスダーグなどが彼の情報をギュスタヴに流し、奇襲をかけたのかもしれません。

いずれにせよ、奇襲による犯行ならばエルムドア一行のような実力者でも不意を突かれれば戦闘にさえならない可能性が十分にあります。

強者たちも予期せぬ攻撃には対処できない場合があります。また、ギュスタヴが誘拐を成功させた背景には、彼の高い実力が関係している可能性も考えられます。

ギュスタヴは単なる反乱者ではなく、戦術や戦闘においても非常に高い能力を持つ人物です。彼がエルムドアを捕えるために仕掛けた攻撃は、単なる偶然や運ではなく、戦闘の技術と冷静な判断力がものを言った結果だと言えるかもしれません。

ギュスタヴと骸旅団

ギュスタヴの行動は、単なる誘拐にとどまらず、背後には大きな政治的背景があります。ギュスタヴは、金銭目的の自己判断で行動したとされていますが、実際にはラーグ公とダイスダーグ卿の命令を受けて行動していた可能性が高いです。

この事件の本質は、単なる殲滅作戦ではなく、獅子戦争を見据えた謀略の一環であったと考えられます。

エルムドア誘拐事件は、表面的にはギュスタヴの奇襲によるものと思われがちですが、実際には複数の政治的陰謀が絡み合った結果であることがわかります。ギュスタヴの行動は、単なる反乱者の自己判断ではなく、背後にある勢力の意図が強く反映された結果だったのです。

【獅子戦争での悲劇】流れ矢での死

五十年戦争では名将としてその名を轟かせたエルムドアですが、獅子戦争ではその輝きが失われます。

南天騎士団ゴルターナ陣営の将軍として参戦したものの、「フス平原の戦い」で流れ矢に当たり戦死。その死は、英雄としての輝かしい彼の経歴に陰りを落とすこととなりました。この記録には疑問が残り、裏には神殿騎士団の陰謀が絡んでいた可能性が指摘されています。

これが偶然の事故だったのか、計画された暗殺だったのかは明らかになっていませんが、結果としてエルムドアは早すぎる死を迎えることとなりました。

ファンの間では、エルムドアの死がグレバドス教会や他の権力者の策略によって仕組まれたのではないかという推測が広がっています。

彼の死後は、ランベリー城は無人の廃虚となっていたようですが、その死を悼む弔問客が墓石を絶え間なく訪れていたとされています。領民からの信望も厚かった彼の人間性がうかがえる描写です。

しかし、その死は物語の終わりではありませんでした。彼はその後、聖石「ジェミニ」と契約し、ルカヴィ「死の天使ザルエラ」として蘇るのです。

【死後の復活】ルカヴィとしての再登場

エルムドアの物語は死後に大きく展開します。彼はフス平原で命を落とした直後、聖石「ジェミニ」と契約し、邪悪な存在「ルカヴィ」の一体である「死の天使ザルエラ」として蘇ります。

彼の新たな姿である「死の天使ザルエラ」は、人間の頃の銀髪の美しい外見とは打って変わり、痩せ細った体躯、飛び出た目、禍々しい小さな翼といった、恐ろしくも哀れな外見をしています。その姿は、『神の怒りに触れて獄鎖に繋がれた堕天使』のようでもあります。

エルムドアは、これまでの英雄的なイメージを裏切る形で、強大な力を持つ邪悪な存在となりました。

彼は転生後、他のルカヴィたちと協力し、「聖天使アルテマ」の復活を目論む重要なキャラクターとなります。この計画を遂行するため、彼はセリアとレディという美女アサシンを従え、主人公ラムザの前に立ちはだかります。

【ゲーム内でのエルムドア】ユニットとしての性能

エルムドアはゲーム内では専用ジョブ「アークナイト」を持つキャラクターとして登場します。物語の中では神の教えに従う聖騎士としての位置付けとなります。

アークナイトのジョブは、汎用ジョブ「侍」をベースに強化された能力を持ち、特に固有アクション「刀魂放気」による「引き出す」能力が特徴的です。

彼の装備品である正宗や源氏シリーズは貴重なアイテムで、多くのプレイヤーが「盗む」ことを試みようと考えますが、彼のアビリティ「メンテナンス」によりそれは不可能とされています。

また、彼の護衛であるアサシン、セリアとレディも強力なユニットです。彼女たちは「仕手」という固有アクションを駆使し、誘惑、即死、ストップ、石化といった致命的な状態異常を確実に付与します。その能力は驚異的で、人間型ユニットの中でも最強クラスとされています。

ランベリー城での戦いでは、彼はラムザ一行を地下墓地に誘い込み、ついに「死の天使ザルエラ」としてその本性を現します。しかし、ルカヴィとしての姿は醜悪であり、外見は堕天使を象徴するかのような哀れなものでした。

【ランベリー城の戦い】ルカヴィとの決戦

エルムドアとの決戦は、彼の居城であるランベリー城で行われます。ラムザたちは、エルムドアの策により妹アルマを人質に取られ、城へと誘い込まれます。

この戦闘では、彼のルカヴィとしての能力だけでなく、セリアとレディのサポートにより、多くのプレイヤーが苦戦を強いられます。

ランベリー城地下墓地では、エルムドアはついに「死の天使ザルエラ」へと姿を変え、その真の力を解き放ちます。墓地に眠る死者の魂を召喚し、ラムザたちに襲いかかるザルエラの姿は、絶望感を漂わせるものでした。

しかし、最終的にはラムザたちに敗北し、地下墓地に消えていきます。

ザルエラの魔力

ザルエラとしてのエルムドアは「フレアジャ」や「スリプジャ」といった「ジャ魔法」を駆使します。

しかし、ザルエラの使うこれらの魔法は強力なように見えますが、プレイヤーからすれば拍子抜けの性能だったとも言えます。

というのも最強の魔法「フレア」と比べ、威力や範囲が劣っていたからです。彼の魔法は、ルカヴィとしての威圧感にはそぐわない性能だったかもしれません。

それでも、彼の戦闘では「トードジャ」のユニークな詠唱や、セリアとレディの連携が加わり、独特の難易度と演出がプレイヤーに印象を残します。

【エルムドアの魅力と課題】なぜ彼はルカヴィとなったのか

エルムドアの物語には、いくつかの謎が残されています。彼がなぜ聖石と契約してルカヴィとなったのか、その背景は詳しく描かれていません。

ただし、敬虔なグレバドス教信者であり異端審問官の資格を持っていたことから、教会や神殿騎士団と深い関わりがあったことは確かです。

また、彼の死因である「流れ矢」にも疑問が残ります。ゴルターナ陣営の主要な将軍であった彼が偶然の流れ矢で命を落としたというのは、陰謀論を疑わせるには十分な設定です。

彼の死には神殿騎士団の暗躍が関わっていた可能性があり、それが彼をルカヴィ化へと導いたと考えられます。

また、彼の人間時代の性格や思想についても、断片的な情報しか存在しません。ブレイブ・ストーリーでは、彼の美談が語られるのみで、内面的な葛藤や動機については深く掘り下げられていません。

エルムドアがゲーム内の物語で描かれるよりも多くの物語を持つキャラクターであることは間違いありません。その人生と死後の物語は、『FFT』というゲームの世界観にさらに深みを与えています。

開発の裏側とファンの推測

エルムドアの特徴的な姿は、流れるような銀髪と銀の鎧です。この外見は、『ファイナルファンタジーVII』のセフィロスに似ていることから、ファンの間で比較されていますが、エルムドアとセフィロスは全くの別人物です。

また、エルムドアのデザインは、セフィロスと似ていることから、FFTの初期のプロモーションでは「セフィロスがイヴァリースに登場?」といったキャッチフレーズが使用されました。

また、ゲームの初期バージョンでは、エルムドアとオルランドゥ、ベオルブ家の兄弟との間にさらに深い関係が描かれていた可能性があり、ファンはそれらが時間的な制約のために削除されたと考えています。

エルムドアまとめ

メスドラーマ・エルムドアは、英雄としての輝かしい過去と、ルカヴィとしての哀れな結末が交錯する、『ファイナルファンタジータクティクス』の中で最も印象的なキャラクターの一人です。

その生涯は、イヴァリースの歴史における栄光と闇を象徴しており、彼の物語を通してゲームのテーマである「権力」「運命」「人間の弱さ」「力への執着」などが描写されています。

名誉ある英雄からルカヴィへの転生という壮大な変遷をたどり、ゲームプレイヤーに大きなインパクトを与えました。彼の物語を深く掘り下げることで、FFTの世界観やキャラクターへの理解がさらに深まるでしょう。

彼のような複雑な背景を持つキャラクターが、物語にどのような意味をもたらすのかを考えると、エルムドアの存在は単なる敵キャラクターではなく、ゲーム全体のテーマを反映した象徴とも言えるかもしれません。

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